第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
新山工との試合は二セット先取し、準々決勝に駒を進めた。
「明日は伊達工か。」
掲示板を見て及川がそう呟くと、
「私、あそこ嫌い。」
莉緒はそう言った。
春高宮城県代表決定戦 二日目
「あれ?莉緒ちゃん、バレー部のマネージャーだったんだ?」
そう言って、及川に似た、腹立たしい笑みを浮かべ手を振ってくるのは伊達工の新主将二口。
「え?なんで?何?知り合い!?」
京谷と共に莉緒を隠すようにしてソイツの前に立った。莉緒は京谷の服をぎゅっと掴み、目の前にいるソイツを睨んだ。
「今日こそは連絡先教えてね。」
「ねえ、全然話が見えないんだけど、何?どういうこと?ねえ!」
「青城祭来てたしつこい客。」
「へえ、アンタもバレー部だったんだ?」
京谷にそう声を掛ける二口。青城祭、引退した三年と共に来ていた二口。クラスでの方何があったかはよく知らねえが、莉緒が嫌いって言うくらいだから執拗に莉緒を口説いたんだろう。莉緒とずっと一緒にいた京谷が明らかに怒ってる様子だし。そんで、コイツらはバレー部の腕相撲にもやってきた。挑戦してきたのは引退した鎌先、笹谷と二年の青根の三人だけだったが。疲れもあったし、鎌先に負けるんじゃねえかって一瞬思ってしまったが、なんとか勝つ事が出来た。「脳筋の鎌先さんが勝てないんじゃ俺が叶うわけ無いじゃないですか。」なんて言って腕相撲こそはやらなかった二口だが、莉緒を狙ってるのはコイツだ。
「まあまあ、続きはコートの上で、ね?」
そう言うと、伊達工メンバーを引き連れ、去っていった。去り際に莉緒ちゃん俺らが勝った後にね、なんてウインクを残して。
「なんて軽いヤツ!しかもサラッと俺らに勝つみたいに言ってたし!」
「及川と似てんな、伊達工の新主将。」
「え!?どこが!?俺あんな軽くないよ!」
そんな及川が部員全員から白い目で見られたのは言うまでもない。