第16章 揺れる髪先 ♥︎ 〜月島蛍〜
僕はそのまま、彼女を家へ連れて帰った。
大人しく、とぼとぼと後をついてくる彼女は、まだ少し迷っているみたいだった。
「……やっぱり、やめる?」
自分の部屋まで彼女を通してから、聞いた。
『…ううん、やめない』
こんなのハッピーエンドじゃないよね。
知ってるよ。
そんなこと、僕が一番よくわかってる。
でも、人生にそういくつもハッピーがあるなんてないでしょ。
そんなの日向みたいなバカだけだって。
「……ごめん」
僕はそう呟いて、結木をベットへ押し倒した。
罰当たりだろうけど、手に入れたって、もう僕のものだって思った。
軽く触れるだけのキスを、おでこと頬にした。
『…月島くん』
「何…」
『…名前、読み方おしえて』
「……けい」
唇が触れるか触れないかの距離で、囁くように呟いた。
『けい…』
僕の名前を呼びながら、結木はどこか安心したように目を閉じた。
それを自分都合で合図だと思い込んで、そっと、唇を重ねた。