第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
「キセキの世代なんて名前にこだわりはない…それでも、あんたみたいのにやるほど、安く売ってねーよ祥吾君」
「奪うって言ったろ?欲しくなったからよこせって言ってるだけだ、ばーか」
黄瀬の言葉にニヤリと笑いながら吐き捨てると、灰崎はその場から立ち去った。
「負けんじゃねーぞ、絶対」
「当然ッス」
火神の言葉に、勝気な笑顔で答える黄瀬。
「桜っちも、応援して欲しいッス!って、立てるッスか?」
「う、うん…」
桜は黄瀬に手を借り立ち上がる。
「怪我とか、してないッスか?」
「大丈夫…それより、氷室さんが…」
心配そうな黄瀬に笑ってみせると、氷室に視線を向ける桜。
「ごめんなさい…私のせいで…」
「気にしないで。君に怪我が無くてよかったよ」
「せめて手当てだけでも…医務室…はダメですよね。薬買ってきます!」
優しく笑いかける氷室だが、桜は足早に薬局に向かってしまった。
「桜っちは本当に健気ッスね」
「残酷なお姫様だね…」
黄瀬と氷室は、思わず顔を見合わせ笑い合った。