第12章 Festival3
「神谷君に会ったの?」
「いえ。ライブ前は、皆さんに会えないと思ったので前もって連絡してたんです。」
「それで、小野さんがいらっしゃるって聞いたので。」
「そうなんだ。」
「僕はね。神谷君が見せたいパフォーマンスがあるって言ってて。」
「それが楽しみなんだよね。」
「あやめちゃんは?」
「私は……」
私は…誰を見に来たんだろう。
「キレイなピアスだね?ガーネット?」
「あ。はい…」
ピアスに指を触れ、俯く。
「透き通るような赤。吸い込まれそう。」
ふと、会場の照明が落ちた。
歓声が上がり、色とりどりのサイリュームが揺らめいている。
初めて見た世界に息をのむ。
白い光に包まれ、その中心でダンスを華麗に決める。
フライングに、歌。
どれも見たことが無い世界で。
呆然とする。
沢山の歓声を浴びる人。
近くにいるようで、遠い存在。
私が想いを寄せるなんて、烏滸がましい事なのかもしれない。
「あやめちゃん。最後まで観たいけど…僕、そろそろ行くね。」
「あ。お疲れさまです。」
「私も、そろそろお暇します。」
「一緒に観られて楽しかったよ。」
「あやめちゃんはさ。」
「ガーネットも似合うけど、僕は…の方が似合うと思うよ。」
「ありがとうございます。」
軽く頭を下げて、小野さんを見送った。