第9章 A.(裏)
「はは…また一緒だな…」
「俺たちって相性、最高だと思うんだけど。」
軽く微笑み、あやめの鼻先に触れるようなキスをする。
「本当に色気の無い発言…。」
呆れたように視線を落とし、乱れたシーツを胸元に引き寄せる。
「あはは。色気やら雰囲気なんて関係無いだろ?」
こんな会話だって、俺にとっては貴重なんだよ。
「………。」
「何だよ。黙っちゃって。」
「何?俺のこと好きになっちゃった?」
そうなってくれれば、どんなに嬉しいか。
「バカなこと言わないで……。」
「私達は、お互い別な人が好きなんですから。」
「需要と供給が合致してるから、こうなったんじゃ無いですか…」
自分で選んだ道だから、後悔なんてしないけど。
キミの口から、その言葉を聞くとさすがに少し辛いかな(笑)
「あはは。ムキになるなよ。冗談冗談。」
「お詫びに、次はもっと気持ち良くしてやるよ。」
「はいはい。では、次回に期待してますね。」
『次回』が約束されたようで、胸が躍る。
本当に単純。
クルッと背を向け、ベッドから抜け出るあやめ。
「帰るの?」
「うん…」
「寂しくなっちゃうな…。」
「バカなこと言わないで下さいよ。」
『寂しい』と思ってるのは本当なんだけど…。
「何もしないから、今日は一緒に寝て。」
年下の女のコにこんな事言うなんて。
仕事だって、なかなか言わないよなぁ。
情けなさに笑えてくる。
「もう…」
そう言って、ベッドに潜り込むあやめ。
嬉しくて仕方ないよ。
ギュッと抱きしめ、額にキスをする。
「そう言う事は、好きな人にしてくださいよ…」
「予行演習だよ。」
『もちろんキミの為のね?』
ニコッと笑って頭を撫でる。
「……勝手にしてください。」
そんな呆れたような発言も嬉しいよ。
今夜は、キミの隣で眠りにつける事に感謝しよう。
「おやすみ…あやめ。」