第43章 key holder
最寄り駅の改札を抜けて、並んで歩く。
「あやめちゃん。」
「ん?」
「やっぱり…何でも無い…」
俯きながら歩みを進める自由。
「自由…さっきからどうしたの?」
「え?」
「この会話…五回はしてるよ?」
「え……そう?」
キョロキョロと視線を泳がせ、今度は夜空を見つめる。
「うん。」
「汗かいてるし…」
「具合悪い?」
「私、自分の家に帰るよ?」
「それは困る!」
急に両肩を掴まれて、声を張られて少し驚く。
「そっ…そぅ?困る?」
「うん。困る。」
歩みを止めて、今度は真っ直ぐな視線で見つめられる。
「とりあえず、1回俺の家まで行こう。」
「帰りは送るから。」
「うっ…うん。」
あまりに真剣な眼差しにそれから何も言えなくなってしまう。