第26章 key
「ごめん。あやめちゃん。」
「鍵…ここにあるよ。」
スケジュール帳を指差し、隙間から見える銀の金具に触れて取り出す。
「実は、少し前に見つけてた。」
「でも…少しでも長く一緒にいたくて…黙ってた。」
「本当に卑怯だよね…」
「タクシー代出すから…あっちで拾おうか?」
眉を寄せて笑う。
差し出された右手を見つめて、私は大きく息を吸い込む。
そして、ゆっくり息を吐き出す。
「違います。鍵を外したのは私の意思です。」
良平さんを卑怯なんて思わない。
卑怯なのは、私…。
踵からジンジンと痛みを感じる。
慣れないピンヒールは靴擦れを起こしてるだろう。
どんなに痛みを伴っても構わない。
これを逃すわけには行かないの。
嫌われたって…。
良くないけど…
ここまで来たら、後戻りなんてしない。