第26章 key
「あやめちゃん…足早いんだね…」
「え?そうですか?」
息をハーハーさせながら、笑う。
「終電に余裕で間に合うね。」
時計を見ると5分前。
駅はすぐそこ。
ホームを照らす明かりが見える。
繋いだ手を離して、改札口まで歩く。
「ホームまで送るよ。」
「え。大丈夫ですよ。入場料掛かっちゃいますもん。」
スマホを取り出すと、あやめちゃんの動きが止まる。
「?どうしたの?」
「家の鍵に付けてたキーホルダーが…スマホに絡まってる…」
「え?」
「多分、鞄の中で…あれ?」
「ちょっと?何で?え?」
それ程大きくない鞄の口を大きく開けてガサガサと手を突っ込んで、中をかき回す。
「ウソ…」
「とりあえず、出してみなよ。」
ガサッと鞄を逆さにするものの金属音は聞こえない。
「何で無いの…?」