第25章 chaos
「佐伯さん。」
「やっぱり佐伯さんのバラードは、泣けますね。」
次の新曲の歌詞を見せて貰ったときに私の心臓は早鐘を打った。
マネージャーからは、聞いていた。
次の新曲は、今まで挑戦してなかった失恋ソングになると。
何か要望は?と聞かれて
「佐伯さんなら、きっと切ない歌を作ってくれると思うのでお任せしますよ。」
「私、佐伯さんの曲好きですから。」
「徹也の『君の声に』、自由の『嘘と未来と』とかね。」
出来上がった歌詞を見た瞬間に、心を抉られるようだった。
前に進めない想いに立ち止まる。
幸せな時間を思い出すのは私だけ?
一緒に歩む事が出来なくても、この想いは消せない。
読み進める度に、胸が苦しくなる。
否が応でも思い出してしまう。
大好きで…
依存し過ぎてた恋…
一緒にいられるのが嬉しくて…
離れてる時間がもどかしくて…
重荷にしかなれなかった…
一人になるのが怖くなった…
お酒が好きで、面倒見が良いあの人との恋…
今、貴方は誰を想っているんですか?
私は…