第19章 stole
「タツは、どうなの?」
「あ?」
「ほら…好きとか…そう言うの。」
「それどころじゃねーよ。今は仕事だな。」
「そうなの?タツは、いつでもモテるから不自由しないもんね。」
「はぁ?んな事ねーし。」
「私も当分恋愛は止めようかな…」
「?」
「自分がどうしたいのか分からなくて。」
「好きなヤツいるんだろ?」
「んー。性格的に実らない恋を続ける自信は無いかな。」
「それに…適わない恋なんて沢山あるもの。」
視線を落とし、笑う。
あのコとノブくんを見て、お似合いだと思った。
嫉妬したのは事実だけど…
やっぱり私にノブくんは……
「お前さ…いい加減前に進めよ。」
「立ち止まってても仕方ないだろ?」
「うーん。まぁ、そうなんだけどね…」
「でも。これからは、『恋』より『お仕事』に集中しようかな。」
「新曲も出るし?」
「うん…」
「何なら、俺の行ってるボイトレ紹介するか?」
「え!?」
「今は、どこも通って無いんだろう?」
「伸びとか色々変わってくるぞ?」
「本当に?」
「興味あるなら行ってみる?」
「うん!行ってみたい!」
これがキッカケなのかもしれない。
ここが潮時。
ノブくんが幸せに出来るコは、あのコなんだろう…。