第4章 おそろい
「あつーい」
夏。
私の隣に座って、少し長めの前髪を上げ、2つのピンをバッテンにして止めているこの子は、私の後輩で、彼氏さん。
さんっていうか、ちゃん。って感じだけど…。
「ねー伊織先輩〜、休憩しようよ〜。あついよ〜」
今学校は夏休み。
課題が多くて終わらない!って言うから、私の家に招いて二人で勉強会をすることにした。
なのに。
当の本人はまだ1ページくらいしかやっていないのに休憩しよう。などと言っている。
「はぁ…。澪ちゃん、そんなこと言ってたら本当に終わらないし、勉強会の意味がないでしょ?」
「え〜。でも暑いじゃん〜」
「それと敬語使いなさい。私のほうが先輩だよ澪ちゃん」
「…はぁい」
ぶぅ。とほっぺを膨らませて私を見る澪ちゃん。
やめてよ…。そんな顔されたら甘やかしたくなっちゃう!
そう。澪ちゃんは男の子だけど、名前負けしないほどに可愛い。
現に、ピンク色のピンが似合ってしまうのだから。
「澪ちゃん可愛いなぁ」
思わず心の声が漏れる。
すると澪ちゃんはもっとほっぺを膨らませて、
「センパイ。その"澪ちゃん"って、やめてって言ってるで…じゃないですか」
そう。澪ちゃんは"ちゃん付け"が嫌いらしい。
私は可愛いからいいと思うんだけどな。
「だって澪ちゃん可愛いし」
「嬉しくない」
「ほんとに?」
「…ちょっと嬉しい」
「本当は?」
「…結構嬉しい」
「よろしい。」
「あぁもう違くて!!!」