第2章 夢と現実の境界線
――心配要らないよ、何も怖い事は無いからね。
やめろ、離せ、私に触るな。
アンタのその汚れた手で、私をこれ以上汚さないで…。――
「…………っ!」
…またこの夢だ、もう何度目だろうか。
目覚めの悪い夢を見て目を覚ますと共に、横になっていると理解する。
窓から射す眩い光に目を掠めながらも、身体を起こし部屋を見渡したが人の姿は見当たらない。
「…生きてる、んだよね。」
自分の両手を眺めながら、生きているのだと確信する。
あれから私はどうなったのだろう。
倒れている所を奴らに見つかって連れ戻されでもしたのだろうか。
そうだとすれば、どの道私はもう生きては行けない。
そんな事を考えていると襖の向こう側から声が聞こえる。
一人じゃない、何人もの声。
「また今日も卵かけご飯かよ…もう雛に顔向けらんねぇよ…。」
「私は三食卵かけご飯で十分ネ。」
「最近依頼無いから生活費も底を付きそうでよ、どーすんですか。」
「どーするったって、どーしようもねぇだろ。来ないって事は世の中が平和って証拠だろ?いい事じゃねーか。」
「言ってる場合か!!生活かかってんだぞこっちは!!もう…。」
聞こえてくる会話は余りにもユーモアの溢れる物だった。
奴らに連れ戻されたのではないと分かり、私の強ばっていた身体が少し解れた。
すると私が居る部屋の襖が突然開かれ、そこに立っているのはまだ幼さが残る眼鏡をかけた少年だった。
その少年は私を見るなり驚いた様子だったが、表情は一変して笑顔に変わる。
「目が覚めたんですね!良かったー!」
「え、えっと…」
「僕志村新八って言います!よろし…ぐおあっ!!」
ご親切に自己紹介をしている新八と名乗る少年の背中を蹴り飛ばし、今度はチャイナ服を着た少女が私の元へ走って来る。
「うおー!マジで起きてるアル!大丈夫アルか!私神楽って言うネ、よろしくネ!」
「あ、うん、よろしく…。」
凄まじい勢いで一方的に話す彼女に少し戸惑ってしまう。
この二人は兄妹か何かか?と思っていた矢先、明らかに歳の離れた男が部屋に入って来た。