第3章 次の任務へ
どうぞ、っていう声が中から聞こえて、私達は館長室へ通された。少し重ための音を響かせて開いた扉の向こうには、恰幅のいい壮年の男性が一人。
「やあ、お待ちしておりました」
ドッシリと置かれた書斎机から席を立って、ニコニコと愛想よくこっちへ来たその人は、御丁寧に私達全員と握手を交わした。
「どうぞ、よろしく」
「よろしくお願いします」
手を握って、目を合わせた瞬間、何とも嫌な感じがした。でも、それが何か、上手く説明出来ない。勘、かな。
「依頼の内容は、この美術館の警備ということでしたね」
「ええ。タチの悪いコソ泥が、何度もこの美術館を狙っていましてねえ」
「コソ泥、ですか」
館長は、ハルの相槌にわざとらしく眉をしかめてみせた。悲しげに目を伏せて、咳払いを一つ。
「初めは、館内のちょっとした物が無くなる程度だったんです。トイレに飾ってあった小さな絵や、ロビーを飾る置物…当然本物ではありませんし、大した価値もありません。ですが段々と、手口が大胆になってきましてね。先日は危うく、展示品が盗まれる所でした。たまたま警備員が巡回していて、盗らずに逃げていきましたが…」
「なるほど、事情は分かりました。少し、調べさせて頂いても?」
「もちろんです。よろしくお願いします」
泥棒かあ…。まあ、値打ちのあるものを売ろうとする不届き者は、今のこの国には沢山いるだろうなあ。