第3章 体育の先生
「なんかいいじゃん、こういうの。」
(えっ…!?)
近づいた顔とその言葉に
アヤセの頬が紅潮する…。
「こんな男ばかりのむさ苦しい環境だろ?
こういうのあると女の人がいるんだなって
ちょっと楽しくなりそうじゃん?」
「そ、そういうものなんですか…?」
「ああ。今日1日生徒たちに自慢してやろ。」
というとアランはクスッと笑う。
「えっ!?
…な、なんか恥ずかしいんですけど…」
「別にお前のとは言わないし。」
「あ、まぁそれなら…」
と、言いかけてアヤセはハッとする。
「で、でも私以外に口紅付けるような人
いないですよね!?」
「あ、バレた?」と、
アランはくすりと笑った。
「も、もうからかわないでくださいよ…!」
「悪い悪い。ったくお前、面白すぎ…。」
と言いながらさらにククッと笑った。
するとアランは、
おもむろにアヤセの腰に手を回すと、
グッと自分の方へその体をを引き寄せた…。
チュッ…
(…!!)
音がしたのはアヤセのおでこだった…。
アヤセは驚いてパッと
アランから体を離すと
キスをされた場所に手を当てながら
真っ赤な顔でアランを見つめる。
アランは柔らかな笑みを浮かべたまま
「これの仕返し…みたいなもんかな。」
と、キスマークを親指で指す。
「まぁここじゃ男ばっかで
大変かもしんねえけど、がんばれよ。
なんか困ったことあれば力になるから。」
そういうとアランは
アヤセの頭をぽんぽんとなでて
去っていった。
アヤセは熱が引かないおでこに
まだ手を当てながら
その後ろ姿を見つめていた。