第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
「こんばんは!」
「おや、今日はスーツをお召しなのですね?」
「仕事帰りなもので、」
「左様でごさいますか
飴玉本舗✡摩訶不思議堂へようこそ」
ニッコリと微笑む伊勢貝さん
伊勢貝さんにしてみれば、俺は昨日今日と連日で3つも飴玉を買っていく上客
今日3万円支払えば、合計で7万円
ボロアパートの家賃二ヶ月分じゃん…
でもこれも今回で最後のはず
「飴玉一つください」
伊勢貝さんに代金を支払うと
「かしこまりました」
そう言って紫色の飴玉を差し出され…ると思ったら、
「え…? 今日はこの色なんですか?」
なんでこの色
紫色に緑を混ぜたような…蓬色っていうのかな
薬膳飴みたい
「効果効能は同じでございますよ?
お色のチョイスは私の…」
「わたくしの…?」
「気分でございます」
「…そうですか、」
どうやら伊勢貝さんは今日は
蓬色の気分らしい
「あっ、そうだ
一つ教えてくれませんか?」
「なんでしょう?」
ずっと気になってて聞けなかったことを
今日で最後だから聞いてみよう
「伊勢貝さんはどうして…僕の名前を知ってるんですか?」
「さぁ…何の事で御座いましょう?」
この質問には結局
答えてはもらえなかった
「お手を」
「あっ、はい」
掌に乗せられた蓬色の飴玉を口に含んだ
願わなきゃ
最後の願い
潤くんとずっと一緒に居たい!
潤くんとずっと一緒に居たい!
潤くんとずっと一緒に居たい!!
飴玉が口の中で溶けきるその前にちゃんと願えた!
これで
これで俺は潤くんとこの先もずっと…
「ゔぁぁっ…!」
激しい頭痛が一気に俺を襲う
早く…早く潤くんの所へ…
「行ってらっしゃいませ、相葉様」
ほら、やっぱり俺の名前…
「どうか、末永くお幸せに
さようなら」
『さようなら』
確かにそう言って
俺の視界から
伊勢貝さんが…消えた