第2章 バーチャルな君と僕
「ホントに…?! 嬉しいな…じゃあ…」
パッと手が離れたかと思ったら
サトシ君がスッと頭を下げた
「改めて、松野智です
これからよろしく!」
「え、あ……こちらこそ
二宮和也を…よろしくお願いします」
僕もつられて頭を下げると
なんだか急におかしくなって
「「ふふっ…」」
2人で笑い合った
笑ってただけなのに
嬉しくて
幸せで
サトシ君の手が
僕の髪に触れる
細くてしなやかな、手
その手にそっと引き付けられると
いつの間にか僕は
サトシ君の胸の中に居た
「サトとカズハにありがとう言わなきゃね」
「うんっ…」
「さよならもね?」
僕達が出会えたのは
『サト』と『カズハ』のおかげ
でももう今日からは
『智』と『和也』だから
「イチから、始めよ?」
サトシ君の背中にそろりと腕を伸ばし
返事の代わりにぎゅっと抱きしめた
「…初デート…」
「えっ?」
「初デート、カラオケ行きたいっ…!」
サトシくんの歌声を生で聞きたくて
「わかった
何歌ってほしい?」
「えと、柴田淳の、」
「「今夜、君の声が聞きたい」」
二人の声が重なって
おでこをくっ付けてふふっと笑い合って
ゆっくり
そう、ゆっくりと
僕の唇と
サトシ君の唇が、触れ合った
耳元で囁く、サトシ君の声が
僕の髪に触れる指が
触れ合った唇が
液晶画面の向こう側じゃなくて
確かに現実(ここ)に居るってことを
僕に教えてくれたんだ
「帰ろうか、一緒に」
「うん、一緒に」
手を繋いで
温もりを分け合いながら
僕たちは歩き出す
僕は 僕のまま
君は 君のまま
ここから始まって行く
現実的 (リアル) な世界…
❦『バーチャルな君と僕』〜 完 〜 ❦