第12章 獅子は咆哮する
『胸と…内腿』
正直に答えるとふわりと身体が浮き、いつの間にか私は机に腰掛けていた。リエーフは、私の足の間に体をねじ込みハーフパンツをたくし上げ、私の太ももを露わにする。そしておもむろに内腿に顔を近づけ唇を寄せた。
体を捩り抵抗するけれど、さすが男子。私の抵抗なんて片手で防ぐ。リエーフが腿に吸い付くたびに自分の身体が跳ねる。
自分の口から自分のものじゃないような声が出て恥ずかしい。
唇を噛んで耐えていると、不意にリエーフの顔が私の方を向いた。
ぺろりと自分の唇を舐めるリエーフはいつもの子犬のような純粋さはなく、大型の獣…まるで獰猛な獅子が獲物を目の前に舌なめずりしているようだった。
「唇…噛まないでください。」
硬く結ばれた私の唇をなぞる指にもときめきを覚える。
「美優さん…キス…してもいい?」
緑玉の瞳が私を見つめる。恥ずかしさで彷徨う視線をリエーフに向けると小さな声で呟いた。
『私…初めてで…』
それを聞いたリエーフ。さっきまでの余裕ぶった顔がきょとんとした顔になったかと思えばいきなり顔を赤く染める。
「え?美優さん…初めて?ちゅーも初めてってこと?え?うそ」
私の返答にテンパりながらも慌ててから私の方を向いたリエーフ。その顔はどこか申し訳なさそう。
「美優さんごめん。調子こいた…初めてだって思ってなくて…」
叱られた犬のようにしゅんとなるリエーフ。私は項垂れた頭に手を伸ばしそっと撫でる。
『リエーフ…やさしく……して?』
そう呟くとリエーフは頭に置かれた手を取り手の甲にそっと口付ける。そして、流れるような動作で頬にリエーフの大きい手が添えられた。
「やさしく…します」
リエーフはちゅっとリップ音を鳴らし額に口付ける。唇は目尻、瞼、鼻先、頬と顔中に落とされた。
リエーフが触れるところがくすぐったくて笑い声が漏れる。
「やっと…笑いましたね?」
少しだけ間を置きリエーフは柔らかく微笑んだ。いつもは太陽みたいに眩しい笑顔なのに今はポカポカ暖かい春の陽だまりのような笑顔。
リエーフにはどれだけの顔があるのだろう。私の知らないリエーフが増えるたび心臓が煩いくらい飛び跳ねる。
『…キス…して?』
瞳を見つめると顔が近づき、おでことおでこがくっつく。
「美優さん…好き」
そういうとリエーフは私の唇に自分の唇を重ねた。