第5章 練習試合と邂逅
腑に落ちない様子で、及川は唇を尖らせる。じっとりとした目で俺の表情を伺う。
「な、なんだよ…?」
「じゃあ“ユリ”ってのは誰…あ痛ーっ!!」
背後から勢いよく飛んできたボールが、俺の真横をかすめて及川の顔面を直撃した。投げた本人がズカズカと足音を立ててやって来る。
「おい及川ッ!!テメェ練習もしねーで何やってんだよ!!」
「いっ、岩ちゃんっ…!!」
「そうやって気ィ抜いてっから怪我なんかすんじゃねーか!オラ、さっさと向こう戻れ!!」
「そんなぁ、顔まで怪我させようとしたのはそっちでしょ!?」
「うるせぇ、テメーの顔なんざ知ったこっちゃねぇんだよ!ほら、来い!!」
「イタイ、イタイって、岩ちゃぁ〜ん!」
耳を引っ張られながら、及川が岩泉に引きずられて行く。及川の側には常に岩泉を置いとくべきだな…、なんて考えながら、俺はため息をついて職員室に戻った。