第3章 秘密
その日も、次の日も
父はあい変わらず毎夜遅くに部屋に戻り
朝、カーテンの隙間の朝日を嫌がった。
あの日ルーク君に「家を潰される」と言われ
少し怖じ気ついて、
彼女を見かけてもそれまでにしたが
気持ちにはブレーキがかからなかったらしい。
毎晩、彼女の夢見た。
ゆっくり瞼を開く。
明日、この家を去る。
最後の夜だった。
急に目が覚めて体を起こす。
目をやると、父のベッドは今日も空っぽだった。
呆れてため息が出る。
外の空気が吸いたくなって
ベランダに向かい窓を開ける。
すると
話し声が聞こえてきた。
「……──聞かれ…ま…よ」
こんな夜中に誰だろうと
ベランダの手すりから見渡すと
以前アナリアが外を見ていた窓が
あの時と同じように開いていた。
「くっ……大丈夫っ……だよっ……ふっ……」
ご主人がリズムよく力んで、動いている。
背後から両肩に手をかけて。
窓枠に手をついた、
アナリアと連動して
!!!!!!!!!!
身を隠した。
ドク ドク ドク ドク ………
心臓が耳の中で脈打っている。
そして、
……………そっと
もう一度見た。
呼吸が聞こえそう。
前後に揺れながら
汗ばんだアナリアが口をまぁるくあけて
眉を寄せている
「声なんてっ……ふっ……出やしないんだから」
はぁはぁと息をあげるご主人
「あいつの血が役にたつとはな、」
背後から太く短い指で胸を撫で回し
彼女に顔を寄せ、頬を舐める
「それにスリルがあって面白いじゃないか、ふんっ」
びくんと羽上がるアナリア
「おお、おお、きゅうきゅうと締め付けてくる…」
「ご主人、声が大きいですよ」
「心配性だな君は。家族の部屋はみんな反対側に面している。それにこんな夜中、誰も聞いてはいないよ。」