第2章 期待
月明かりが優しく降り注ぐ、薔薇の庭
生ぬるい風が花達を揺らす
「兄さん」
呼びかけに彼は振り返った。
僕を確認すると向き直り…
また指先で花弁を愛でる。
「なぁに?」
「今日…、書庫でピーター君に何したの?」
出ていくうしろ姿を見た。
口角を少しだけ上げて、
心底はすごく楽しそうな笑みを浮かべて
そして見つけたピーター君は
まるで魂を抜かれたようで
「なにって、…ん─……
ちょっと…お仕置き?」
くすっと笑う。そして
「なんで?」
首をかくんと返して、流し目に僕を見る。
確かに…
兄さんは綺麗だ。
「………っ」
重い玄関を開いて中に入った。
いつもそうだ。
兄さんは、いつも僕から奪っていく。
好きだった幼なじみのニーナも
優しかった庭師のダリスさんも
そして
母さんも
ガチャ バタン ッ ッ
部屋の戸を、思いきり閉めた。
夜だからって、かまうもんか。
そして乱暴に、ベッドに腰かける。
僕を……
…見て欲しいのに
「……フェイ?」
ルークが心配して入ってきた。
横に腰を落とし、どうした?と僕の頭をくしゃりと撫でる。
「…………」
とられたくない。
今度は、とられたくない……
じっと覗きこんでいだルークが、
僕の目尻の雫を吸った。
そして頬
首
下の方へと……唇を落とす。
「……ルーク」
「……僕のことすき?」
くちゅりと、粘膜を鳴らして僕を見上げる
「好きだよ」
「……ぅん。」
優しく、ぐいと頭を下げ押した。