第21章 猫王子と嫉妬
高尾「?」
『あ、ごめん。何?』
高尾「お前さー、人の話ちゃんと聞いとけよなー」
『悪ぃ悪ぃ!で、何だっけ?』
高尾「だーかーらー、何でWCの決勝戦見に来なかったわけ?」
違うよ、和。見に行かなかったんじゃなくて、見に行けなかっただけ。あんな赤司の姿が見たくなかった、それだけだよ。…なんて言えるはずもなく、あたしはカラカラと乾いた笑いを送った。
まぁ、そんな様子を3年間もおバカコンビとしてやってきた親友に隠しきれるものでもなく、プチ同窓会中にも関わらず、和に連れ出された。
女子「え、何?と高尾君どっか行くの?」
男子「は?お前らいねーとつまんねーじゃん」
高尾「悪い悪い!すぐ戻るからよ!」
あたしもヘラヘラと笑うと、和を見てその笑いをやめた。和はいつもの間抜けな顔ではなく、真剣にあたしの目を見てたから。
高尾「…で、何かあったわけ?赤司と」
『…何もない』
高尾「…ウソつくなよ」
『本当に何もねーよ。強いていうなら、あたしが逃げてるだけ』
高尾「逃げてる?」
あたしは和に全てを話そうと決めた。
『赤司と和の試合、見たよ。お互いに力をぶつけ合った、いい試合だった。…和にこんな事を言うのは気が引けるけどさ、多分赤司は本気じゃなかった』
高尾「…何を今更。んな事知ってるよ」
『…そっか。あたしは赤司が怖くなった。和が知っての通り、あたしはバレーが大好きだよ。赤司もそうだと思ってたんだ。けど、赤司はそうじゃなかった。勝つ事が当たり前、そんな世界で生きてきた』
高尾「…真ちゃんもそんな事言ってたな」
『だからこそ、勝利の喜びも分かってない。勝つ事が当たり前って事に反論はしないよ。けど、赤司は練習も誰よりもストイックにしてる。勝つために誰よりも。だからこそ、怖くなった。赤司は何のためにバスケそしてるのかなって。あたしはそれを考えるのが怖くて、逃げた』
高尾「…」
『何言ってるか分かんないよね。ははっ、ごめん和。忘れt』
「そういう事か」
『…は?今赤司の声が…』
「そうだよ、僕だ。」
なんとびっくり。そこには腕組みをした赤司様が降臨してらっしゃったのだ。