第13章 温泉旅行へ*1日目午後編*
光秀と桜が川下りを終え、川岸を歩いて戻ってきている頃。午前中からめいめい好きなことをして過ごしていた武将達が、宿の大広間に昼餉のために勢ぞろいしていた…。
「おい」
「…は」
「光秀と桜はどこにいる」
「まだ…戻っておりません」
昼飯の時間になっても、二人が戻ってこない。機嫌が悪い御館様に返事をしたところで、宿の台所へ行っていた政宗が戻ってきた。
「光秀に昼飯持たせたって言ってるぞ」
「大方、舟の上ででも楽しんでるんじゃないですか」
「舟の上…素敵ですね」
いつもの不機嫌顔をさらに深くした家康と、俺の横で少しずれたことを言う三成。かくいう、俺もあまり気分は良くない。光秀の次は俺だ。あいつ、ちゃんと戻ってくるんだろうな。
「光秀のことだ、昼飯のことなど、桜に言ってはいないのだろう」
「ええ、そうでしょうね」
さすが御館様。良く分かっていらっしゃる。相槌を打った家康と共に頷く。桜と昼飯まで共にしていては不公平だという話になったのだ。
集まって昼飯を取ることを桜が知っていたら、きっと戻ってくる。あの子はそういう子だ。とすれば、光秀が故意に黙っている。