第8章 君を待つ雨の午後<伊達政宗>
あなたはいつもそう。
私の心をかき乱して。
「桜」
どうして来たの。
己惚れてしまうわ。
どうしてそんな顔で名前を呼ぶの。
期待してしまうわ。
「桜。愛している」
・・・嘘よ。
「桜」
―――ああ。
来なければ、諦められたのに。
「先に言われてしまったわね」
貴方の本心。
貴方の言葉。
本当かどうかなんて、もういいわ。
今だけの夢であったとしても。
「愛してるわ、政宗」
だってほら、触れる指はこんなにも温かい。
頬を伝う透明な滴は、きっと想いが通じあったから。
拭ってくれる優しい手は、今だけは私のもの。
終