第54章 スペシャリスト
ドゴッ、と強烈な音が体育館にこだまする。
スキール音が消え、声が消え、コンマ数秒だけ音が全て消えた。
その数秒は長く感じられた。
皆顔を見合わせ、そして得点版へと視線を走らせる。
異様な静けさを保ったまま、パサッと静かに得点版が捲られた音がした。
「「っしゃァ!!」」
「「あー、くそ」」
刹那、体育館を揺らす大きな音。
喜びと悔しさの音。
「うぇーい、俺達の勝ちだな、木兎」
「くっそぉー!!」
「ふん、どうせマグレでしょ。
飛雄が俺に勝つなんて有り得ない」
「マグレじゃねェだろ、実力だ。
俺達のな」
「岩ちゃんってばいつから飛雄の味方になったの!?」
「俺は元から誰の味方でもねェよ」
「勝ちました!勝ちましたよ研磨さん!
見ました!?」
「知ってる…」
「くっそぅ…影山に負けた…!」
「はん、どうだ」
「次は負けねェ!」
「次勝つのも俺だ!」