第7章 濡れた体と #木吉鉄平
貴方side
『どうぞ』
日向「お、さんきゅ」
『どうぞ』
伊月「ん、ありがとう」
休憩中の先輩達にドリンクを手渡ししていく。
『木吉先輩もどうぞ』
木吉先輩は私がマネージャーになって初めての部活だ。
木吉「おーありがとうな。こういうの今まで全部自分たちでやってたからなぁ」
ゆっくり目を閉じながら木吉先輩が言う。
伊月「確かに。今までは練習終わった人が全員分やるって事になってたしね。誰も早く終わらせようとしなかったよな」
木吉「本当、が来てくれて助かるなぁ」
『いえ、私の仕事はこれですから。木吉先輩も無理しないでくださいね』
木吉「ああ、もちろんだ」
目を細め、木吉先輩が言う。
その時に、私の足元にボールが転がってきた。1年生が自主練をしているみたい。
しゃがみ込んで、ボールに触れた瞬間、背中からお尻にかけて冷たいものが滴り落ちた。
『ひゃっ?!』
思わず、背中を反らしてしまう。
振り返ると、木吉先輩が驚いた顔で手元を見ていた。
手には、先ほどまであったはずのドリンクが無い。
床に落ちていた。
暫く沈黙が続き、口を開いたのは木吉先輩だった。
木吉「すまん、手が滑った」
日向「おい木吉、ネタか?ネタなのか?」
真面目な顔で言う木吉先輩ひ日向先輩がツッコミを入れる。
リコ「もーっ!何騒いでるの?って…」
リコさんは私を見て、驚いた顔をした。
リコ「もしかして、鉄平がドリンク落としたの?!」
木吉「おー、リコ、よく分かったな。」
相変わらずマイペースだ。
リコ「よく分かったな、じゃないわよ!早く拭かないとベトベトになるわ。
ちゃん、早く拭いてきてくれる?」
『はい。』
リコ「床は私が拭くから、鉄平はちゃんと一緒に行ってきなさい!」
木吉「分かったぞ」