第58章 Thousand of …
カタカタとキーボードを打つ音が聞こえる。
ちらりと視線を遣ると、眉間にしわを寄せたあなたが見える。
ダイニングテーブルを占拠して、会社でやりきれなかった仕事を片付けてるとこだ。
最近、部署が変わってこういうことが増えた。
ダイニングと続きのリビングのラグの上から、そんなあなたを眺めてる。
集中してるあなたは、そんなことには気づきもしない。
あいかわらず白い頬はちょっと窶れてる気がする…
「無理…しないでね…?」
返ってくることのない問いかけ。
でも言わずにはいられなかった。
無理、してるように見えたから…
「えっ…?なんか言った?」
びっくりした。
まさか返事が返ってくるとは思わなかったから。
「ごめんね!今、英訳で詰まってて…聞こえてなかった。なに?なんて言ったの?智くん」
「え…別に…」
「嘘。なんか言ったでしょ?ごめんね、ほんと」
ちょっと指で目頭を押さえながら立ち上がった。
「ご、ごめん…手を止めさせて」
「何いってんの…こっちこそ、ごめんね…?仕事、家にまで持ち込んで…」
何言ってんだよ…
それはあなたが仕事を頑張ってるから…
評価された結果なんだから…