第10章 雪・月・華 ~その白き腕に~
その夜も男たちが智の身体を貫きに来る。
中には念仏を唱えるものもあった。
智は今日は”人”になるためのあそびをしたくなかった。
せっかく湯に浸かったのに…
そういう日は少し暴れてしまう。
暴れながら潤の言葉を思い出す。
”あんなの遊びじゃない”
あそびじゃなければ、なんなのだろう。
誰にも聞けないでいた。
じゃあ、これは…一体何なんだろう…
外の世界を知らない…幼い智には、その答えを見つける術はなかった。
だから潤に会いたかった。
潤はだれとも違う。
男たちみたいに、父様みたいに…
自分の身体に触ったりしない。
「やだっ…さわらないでっ…」
伸びてくる無骨な男たちの手を振り払う。
無駄なことだとわかってもそうせずには居られなかった。
「ちっ…」
誰かが舌打ちした。
そうかと思ったら頬に衝撃が走った。
初めての衝撃に、何が起こったかわからなかった。
「おとなしくしろっ…」
部屋に響く声に智は怯えて動きを止めた。
頬が熱い…
ねえ父様…翔…痛いよ…
ぼく…ちっとも楽しくないよ…
男たちが去ったら、潤が来てくれる。
明日になったら照が髪を水で梳いてくれる。
その楽しみを思って、智は目を閉じた。