第16章 Bird Cage

会長「そんなにそいつが好きか」


「………はい」


会長「だったら妾にでもすれば話は早い。わざわざ組を出る必要は無かろう」


智父「………」


どこかで聞いた台詞だな…。


会長「適当な女と結婚して子供を持てばそれでよかろう」


「それは出来ません」


会長「何…？」


「形式だけだとしても…彼以外の人を自分の側に置く事は…出来ません」


会長「………守」


智父「はい」


会長「何故お前は受け入れてる。産まれた時から跡継ぎとして育てて来たのはお前だろ。再婚もせずに１人で育てたのはお前では無いのか。何故黙ってる」


智父「申し訳ありません」


会長「謝罪を聞きたいのではない」


智父「私も反対致しました。しかし聞かなかった。この子は…今までずっと私の言う事には逆らわなかった。初めてです逆らったのは」


「………」


智父「２人には…見せて欲しい。私が出来なかった事を。外の世界に飛び出してどこまで立派にやれるのか…見せて欲しい」


会長「………なるほどな…」


「本当に…申し訳ありません」


会長「………」


「松兄…松岡は…大野組の柱です。自分も何度も助けられました。だからこそ…自分じゃなく松岡に若頭というポジションを任せられていたんです。自分以上に…組長を…後の関東昇龍会をまとめられる器です」


会長「松岡」


松岡「はい」


会長「お前はそれでいいのか」


松岡「………自分には…組長という器は…勿体無い。しかし…ぼんが直々に『任せる』とおっしゃられました。今は…その期待に応えられる様に…精進していくつもりです」


会長「………そうか」


組長の表情が…少し緩んだ気がした…。