第12章 ♤キズを癒やす手（牛島若利）完結

「牛島くんなら少し任せても
大丈夫だと思うので席を外しますね」

保険医がそう言って出て行く
いつもの俺なら
なんの問題もないが
今の俺は………

寝ている布施の髪に
指を滑らす
自分の髪とは全く違う
身体同様
細くやわらかい髪
そのまま静かに頭を撫でると
瞼がうっすら開く

「布施、大丈夫か？」

目を開けた布施に問いかけると

『ゴメンナサイ！』

やはりだが、イキナリ謝られた
そして警戒心がヒシヒシと伝わる
彼女の口からは
白布の名前

口を塞いでしまいたくなる
欲求を必死で押し殺し
布施の赤くなっている
オデコに手を伸ばす

布施がその手をじっと見ている
怖いのだろうか？
近づける度に固まる布施の表情に
手は動と静を繰り返す
あと少しのもどかしさが
胸を締め付ける