第9章 赤い涙
『智さんーーーー
智さんーーーーーー 』
俺を一生懸命呼び続けている声と、握り
しめる手のぬくもりに重たいまぶたを
あける。
『智さん! ……良かった
本当に…良かった…今医者呼びます』
そう言って
俺の手を握って涙を流している彼の
ぼやけて見えていた
姿がだんだんとはっきりと見えてきた
。
大『あの……
俺…事故にあって…
あなたが…助けてくださった…
んですか?
…でも何で俺の名前…? 』
あれ…?ーーーーーー
何でだろう
……こんなに温かくて心地良いのに
誰か分からないーーーーーーー。
俺の言葉に目を見開いて大粒の涙を
流す彼の事を俺は動くことも出来ずに
見つめていた……。