第19章 不言色(いわぬいろ)
「翔さん、今日の夕飯どうする?」
車の中で、愛くるしく俺を見る瞳。
全部、俺のもの。
「そうだな。なんか買って帰るか」
ハンドルを握る手に和也の手が重なる。
「そんなに早くふたりきりになりたいの?」
「あたりまえだろ。夕飯どころか、お前のこと食べたくてしょうがないのに」
「ぶっ…な、なに恥ずかしいこと…」
「ふふ…いいだろ…?たまには…」
「もう…翔のばか…」
真っ赤になってるその耳も、俺のもの。
「かわいいな、和也」
「えっ…も、もうっ…真面目な顔してなにいってんのよ」
「だって本当にそう思うんだもん」
「もーわかったから…東急でも寄ってこ?地下でなんかお惣菜買ってくるから…」
「わかった。じゃあそっち方面いく」
ハンドルを切ると、和也と目があった。
にっこり微笑むその笑顔も俺のもの。
全部、俺のもの。
後部座席に置いてるカバンの中でスマホが鳴り響いた。
「あ、和也ちょっと見てみて」
「うん、わかった」
カバンを取って、スマホを取り出した。
和也が画面をみて、こちらに差し出してきた。
「出てあげたら?」
冷ややかな声だった。
画面に表示されていたのは…
”松岡 昌宏”
始まりはいつも、underground……
【END】