第52章 初恋苦し（北信介）完結

1限目のチャイムには
もう間に合わへんけど
せやからって諦めて
ここに居るんはアカンやろ

だからもし、許されるなら

『え？どういう事ですか？』

「これでも三年やさかいな
サボるわけにはイカンねや
お前の熱もエラい上がってきとるし
このままココでユックリ寝て
そっから…俺の相手したってや」

ここで帰りを待ってて欲しい

『…え？でも…人の家やし
風邪移したらアカンし…』

そんな俺のワガママな申し出に
戸惑う布施に

「お医者さん来てくれはったから
診て貰い
ほんでユックリ寝といたらエエ」

扉の向こうから
婆ちゃんの声

「婆ちゃんいつから居ったんな！？
てゆっか、お医者さんて…」

「ウチのかかりつけの先生がついでに
診てくれる言うてはるから
診て貰っとき
親御さんと先生には
ウチからも連絡したるさかいな」

そう言えば今日は往診の日やし
誰も居らん家に返すよりは
絶対エエ。
婆ちゃんが一緒に居ってくれるのも
安心やしな。