第51章 ♡陽だまりの粒（岩泉一）完結

「何か食べて帰る？」

「…いや、今日は止めとくわ
走って帰…」

着替えを終えて
やっと思い出す
もう一つ破れた事があったのを。

「岩ちゃん？？」

「先約があんだよ
お前も身体冷やす前に帰れよ」

荷物を担ぎ
会場の出口辺りをウロウロしてると

『…おつかれさま』

小さな声が
俺を呼び止めた

「…すまん。
約束守れなかった
負けちまった
牛若強ぇよ…クソ…！」

声の主は分かってる
一番会いたかったヤツだ
一番勝ちを届けたかったヤツだ

でも振り返られない

あんだけ大見栄切ったのに

「…どんだけ追いかけりゃ
あいつの首根っこ掴めんのかな
三年…必死に追っかけたのにな」

カッコ悪くて仕方ねぇよ

背中を向けたまま
苦い笑いを零す俺に

『…高校があるじゃん！
はじめちゃんなら絶対勝てるよ！
諦めてないなら
負けじゃないｯｯ！！』

大きな声がぶつかる

振り返る人の波に釣られて
俺も姫凪を振り返ると
涙で顔をグチャグチャにした
姫凪が俺を見つめてる