第9章 tragic love②
ー松岡sideー
眠れなかった。
翔とあれからろくに口も聞かないまま、ベッドに潜り込んだ。
いつもは腕の中に居る翔も、今日は俺の背中の向こう側で静かに寝息を立てていた。
翔は悪くない。そんな事分かってる。
でも頭では納得していても心が着いて行かない。
そんな男じゃ無かった筈だ俺は。
寝返りを打ち、翔の寝顔を見つめる。
閉じられたその瞳からは涙が流れていた。
「………翔…」
辛いよな…妹さんの事…。
俺には見守る事しか出来ない…。
俺は…これから翔を支えていけるのか…。
寝ている翔を引き寄せ抱き締めた。
「………ごめんな」
腕の中の翔が動いた気がした。
「………愛してる…」
その愛しい身体を抱き締めたまま、俺は一睡も出来ずに朝を迎えた。