第6章 新生活
「ふぅ…」
ようやく落ち着いた吐き気に安堵し、俺は口と顔を洗った。
潤に謝らなきゃ。八つ当たりしてしまった。
俺は絞ったタオルで火照った顔を押さえながらリビングに向かった。
「潤…?」
顔を覗かせると潤はキッチンに立っていた。
………何か作ってる。
「………潤…」
潤「あ、翔。つわりは落ち着いた?」
「あ、うん。あのさっきは…」
潤「飯作ったから食べよう。座って」
「いや、ちょっと食欲は…」
食べ物を想像するとまた吐きそう。俺は首を振りながら潤を見つめた。
潤「つわりにいい食べ物調べたら色々あってさ。無理だったらいいから試してみて?」
さっきの事は忘れたかの様に、潤は笑顔でテーブルに料理を並べていく。
「………これ…」
潤「生姜ってつわりに効くんだって。だからこれは…ジンジャーティー。レモンで割ったから飲みやすいよ」
グラスの隣にはサンドイッチが並んだ。
潤「後はサンドイッチも野菜とかだったらさっぱり食べやすいらしいから。レタスとハムね。物足りなかったらチーズもあるからね」
「………美味しそう…」
俺は誘われるまま、椅子に座った。
潤「夕飯も色々調べて作るからさ。今は辛いけど…一緒に頑張ろう」
「………」
一緒に頑張ろう。
潤…八つ当たりした俺が悪いのに…。
潤「え、翔?どうしたの?」
いつの間にか、涙が溢れていた。
潤「やっぱりまだきつい?無理しなくていいから」
「ちが…ご、ごめん…ごめんなさい…」
潤「何々?どうした?」
潤が慌てて俺の元に駆け寄り、抱き締めた。
「俺…つわりでイライラして…潤に八つ当たりしたのに…何でこんなに優しいんだよ…ぐすっ」
潤「そんな事…気にするなよ。つわりは翔のお腹の中で赤ちゃんが元気に育ってる証拠だろ?だから俺は嬉しいんだ。でも翔は辛いだろ?俺…出来るだけ和らげる事しか出来ないからさ…謝りたいのは俺だよ」
優しい…優し過ぎる…。
「もう…!いい男過ぎるんだよ馬鹿潤!」
潤「馬鹿って…」
俺は力任せに潤に抱き付いた。
本当に…いい旦那さんに巡り逢ったな…。
俺は背伸びをし、珍しく自分から潤にキスをした。