第21章 wound
ー潤sideー
翔がストーカー被害に遭ったというニュースは直ぐにマスコミに知れ渡り、日本中を騒がせた。
何処から漏れたのか、流産した事まで報道で流れてる。
幸いレイプされた事までは…報じられなかった。
翔は…身体と心の傷が癒えるまで…無期限の活動休止を発表した。
世間からは…同情の声が上がった。
あの事件から…2週間。
翔は…退院の日を迎えた。
「ただいまー」
翔母「お帰りなさい」
翔「………ただいま」
松葉杖を付きながら翔は家に上がる。
膝の傷は…思ったよりも深くて治るのにはもう少し時間が掛かる様だった。
太陽「まぁま」
お義母さんの腕に抱かれた太陽が翔の元へ行こうと手を伸ばす。
翔「………太陽…ただいま」
松葉杖を壁に立て掛け、太陽を抱っこする。
「翔大丈夫?」
翔「少しなら…歩けるよ」
太陽を抱っこしてひょこひょことリビングに戻る翔の背中を見つめる。
翔母「ご飯用意してるから食べてね。私もう帰るわ」
「え。一緒に食べられないんですか?」
翔母「そういたいけど…今は3人でゆっくりした方がいいと思うから。翔の事…お願いね潤くん。必要な時はいつでも来るから」
「ありがとうございます」
翔母「じゃあね」
そのままお義母さんは帰って行った。
「翔。お腹空かない?」
翔「………」
首を横に振りながら…翔はソファーで太陽を抱っこしていた。
「少しでもさ…食べようよ」
翔「お腹空いたら食べるよ」
「………分かった。食べたくなったらいつでも言ってな」
翔「………」
太陽「きゃっきゃっ♪」
無邪気な太陽は…久し振りに母親に甘えられる事が出来て…本当に嬉しそうにはしゃいでいた。
そんな太陽をあやしている翔は…どこかぼんやりと…虚ろな表情だった。
「………」
あの事件は…翔の心と身体に深い…深い傷を落としていた。
俺に…何が出来るのか。
そして…自分の身体の事をまだ知らない。
どうやって言えば良いのか…。
もう…子供が出来ないかもしれないなんて…。
今は…まだ言えない。
俺は…今はただ翔に寄り添う事しか出来なかった。