第4章 結婚までの道のりー前編ー
ー翔sideー
潤母「いらっしゃい翔くん。どうぞ上がって?」
「お、お邪魔します。あのこれ…つまらない物ですが…」
潤母「まぁ虎屋の羊羮。ありがとう。一緒に食べましょうか」
玄関で潤のお母さんに笑顔で招かれ、俺は限界まで深く頭を下げ挨拶した。
潤母「ふふっ、緊張しないでどうぞ」
そう言うと一足先にリビングに戻って行った。
潤「緊張しないで?」
「………するに決まってるだろ。結婚の挨拶だよ?」
靴を揃えて上がり、潤と並んでリビングに向かった。
潤「うちは大丈夫。前から『お前には勿体無い位だ』って言われてたし。絶対喜ぶよ」
リビングに入ると、潤のお父さんがソファーに腰掛けテレビを観ていた。
潤父「翔くん。久しぶりだね。いらっしゃい」
「お邪魔します。お休みの所お邪魔してすみません」
俺は潤のお母さんと同じ様に、深く頭を下げた。
潤父「どうぞどうぞ。楽にしなさい」
促され、俺は正面の長ソファーに潤と一緒に腰掛けた。
潤姉「翔くんいらっしゃい。久しぶり」
キッチンからお茶を運んで来た女性。
潤とよく似た顔立ちの美人。
潤「姉ちゃん帰ってたの」
潤姉「当たり前よ。せっかくだもの休み取ったわ」
潤「そっか。わざわざありがとう」
「いーえ」と微笑む俺と同じ歳の潤の姉、恵さん。
サバサバした性格で潤と仲がよく、俺も気が合い「めぐちゃん」なんて普段は呼んだりしてる。
潤母「お待たせー」
お母さんが切った羊羮を皿に持ってテーブルに並べた。
潤父「おー虎屋の羊羮か」
潤母「翔くんのお土産よ」
潤父「そうか。わざわざありがとうな」
「い、いえ!」
その後暫くは羊羮を食べながら穏やかな時間が流れた。何気ない雑談を交わしながら。
潤「………あのさ」
飲んでいた湯飲みをテーブルに置いた後、潤が咳払いをする。
俺は隣で姿勢を正した。
潤「………電話で話したけど、俺…翔くんと結婚する事にした。事務所にも許可貰ったから…近い内に籍入れようと思います。それと…もうすぐ子供も産まれるんだ…」
驚いた顔で俺達を見つめる3人の姿がそこにあった。