第14章 生涯一度の恋
駐車場の車内、ポツンと置き去りにされる。
後部座席では太陽くんがすやすやと静かに寝息を立てている。
翔ちゃん…完璧に怒ってる。
いつもは穏やかだけど…一度怒ると翔ちゃんは本当に怖い。
どうしよう…追い掛けようか。
迷っていると、直ぐに翔ちゃんは戻って来た。
翔「ほい」
「え…あ、ありがと…」
渡されたのは、温かいコーヒー。
それを飲みながら…翔ちゃんはふぅと息を吐く。
翔「………で、どうしたの」
「え?」
翔「さっきの女の人。あやちゃんだっけ」
「う…ん…」
翔「話したくないならいいけどさ…悶々としてるなら…聞くよ? 」
そういう翔ちゃんの瞳は…いつもの温かい眼差しだった。
やっぱり…翔ちゃんは優しい。
「……ごめん…」
俺は…メンバーにも話してない昔の恋を…翔ちゃんに語り始めた。
「……元カノなんだ」
翔「………何となくそうかとは思ったけど…」
「うん…」
翔「いつ付き合ってたの?」
「Jr.の時から…別れたのは…デビューしてから暫く経ってからだから…2年位付き合ってた…」
翔「そんなに長く…」
「………うん…」
翔「………そっか…」
「………本気だったんだよ。彼女だけは…。あんなに愛せる人…他には居ない。でも…彼女はそう思ってなかったみたい」
翔「………どうして」
「………ある日突然振られたんだ。別れてくれって。理由聞いても答えてくれなくて…ただずっとごめんって言ってて」
翔「そっか…」
翔ちゃんの手が…優しく俺の手を握った。
「………多分…他に好きな男が出来たんだよ。だから…子供もいて…」
翔「………」
「っっ…なのに何でかな…いつまでも忘れられないんだよ…今日何年振りかに逢ったのに…こんなに…きついなんて…」
翔「相葉くん…」
そっと肩を抱き寄せられ、俺は翔ちゃんにしがみついて泣いた。
翔ちゃんは涙が枯れるまで…俺の肩を抱いてくれていた。