第5章 ♦マイクが…
着いたのはカラオケボックス。
てっきり飲みに行くもんだとばっかり思っていたんだろう、大野さんの顔には無数のクエスチョンマーク。
そんな大野さんを他所に、フロントで受け付けを済ませ、大野さんの手を引いてエレベーターに乗り込んだ。
階数ボタンを押すと、ゆっくり扉が閉まる。
「カラオケ、来たかったの?」
無言で頷く俺。
チンの音と同時に、再び扉が開かれた。
繋いだままの大野さんの手を引き、指定された部屋へ向かう。
伝票に書かれた番号を確認し、部屋の扉を開けた。
「わぁ、畳の部屋なんだぁ~♪」
大野さんはブーツをポンポンッと脱ぎ捨てると、畳にゴロンと寝転がった。
まったく…靴ぐらいちゃんと揃えなさいよ…
心の中でぼやきつつも、綺麗に揃える俺…
「見てみて~、堀りごたつになってんの♪」
堀りごたつに足ブラブラさせちゃって、子供か、アンタは…(笑)
「大野さん、ビールでいい?」
うん♪と、これまた満面の笑顔。
俺、運転あるから飲めないんですけどね…(泣)
ビールとソフトドリンクをオーダーして、俺は大野さんの隣に腰を下ろした。
「ところで、何でカラオケ?」
突然真面目な顔と、固い口調で聞かれて、一瞬躊躇したけど、俺は『歌』について悩んでいることを話した。