第2章 ♠鍋が…
翔side
トントン、グツグツ…
良い臭いに誘われて、ゆっくり目を開けた。
そこには見たこともない絶景!
あいうえお順に並べられたCDラックに、机の上にはきちんと整理された資料のファイル。
そして、床に鎮座するのは迷彩柄の布団を纏ったこたつ。
これを絶景と言わずしてなんと言う!
俺は感動しっぱなしで、口から出るのは、ホー、とかハァーしかない。
「翔さん起きたの?」
キッチンの方から声がかかる。
「やっぱすごいよ、松潤…」
「そりゃどうも。………よし出来た」
何が…?
ボストンバッグから手袋みたいのを取りだし、それを両手にはめた。
「ちょっと熱いの運ぶから、じっとしててよ?」
言われて、はい、っとソファーの上に正座する俺。
運ばれてきたのは、グツグツさせながら水蒸気を吐き出す土鍋。
「食べようぜ」
箸と、取り皿が手渡される。
ん? ちょっと待て…
鍋もそうだけど、こんなん我が家にあったっけ?
きっとおかしな顔してたんだろうね…
「翔さん家には無いと思って、全部ウチから持ってきた」
って、親指でボストンバッグをクイクイ…
あー、だからあんなドテカイボストンバッグね…
妙に納得して、鍋に箸をつけた。