第58章 ストック
Sho side
「来ると思った…」
専務は俺の事を見て呆れるように言った
俺はその専務の態度も気に食わなかった
翔「っ…あいつ…故意に潤を狙ったんですよね…?」
「おそらくね…」
専務の話では
コンビニの防犯カメラに潤が映ってから
事故にあったおおよその時間…
あいつに病院に運ばれた時間を考えても…時間がかかりすぎているらしい
「ったく…冗談じゃないわよ…助かったから良かったものの…普通の神経じゃ考えられない…」
翔「潤の躰に痕跡があったんですか…?」
「さすがに…躰に残るほどのものはなかったみたい…でも…服にはついてたって…」
「ついてた…?」
マネージャーは恐る恐る口をはさんだ
「体液が…」
専務の言葉で俺の目の前に火花が飛んだ
それを蹴散らすように
持っていた資料を全部床に叩き落とした
「櫻井くんっ…」
翔「っ…ぁぁっ…くそっ…」
「落ち着いてっ…」
マネージャーに抑えこまれるように
俺は椅子に座らされた
カツンとヒールを鳴らして
専務が立ち上がる
「櫻井が取り乱しててどうするの…?そんなんじゃ…こっちも動かざるをえなくなるけど…?」
冷たい声が俺の頭の中に散った火花を一つ一つ揉み消していく
「幸い…仕事はできるみたいだし…本人の事は…あんたたちに任せようと思ってたんだけど…」
間違ってたかしらね…?と
専務は煙草に火を付けて
その吸いかけを俺に差し出してきた
俺はそれを咥えて
煙を一気に肺まで送り込んだ
「大事な嫁なんでしょ…?支えなさいよ…責任もって…」
まさか専務にそんなことを言われると思わなくてポカンと顔を上げると
バシッと資料で叩かれた
「なんて顔してんの…しっかりしてよ…大事な時期なんだから…これでも頼りにしてるのよ…」
あくまでも俺たちは商品
事務所にとって使える品…
だから大事にされる…
でも,だからこそ…
手厚く世話をされて…
俺たちはぬくぬくと過ごすことができる…
翔「ありがとうございます…」
中学の時…この事務所の門をくぐった自分を
ほめてやりたいと思った…