第3章 3
Kazunari side
パグは…あの女の犬じゃない…
信じて欲しい…
智の瞳がそう訴えるから
それは…信じよう
俺はね…信じられるよ
あなたの口から聞いたから
でもさ…
和「わからないじゃ,済まされないこともあるよ…?」
思わず強い口調になって一呼吸置く
知らなきゃ許されるってもんでもない
和「その写真をみたファンの気持ち,わかる?…女の犬で金儲けしてるって思われても仕方ないんだよ…?」
智の瞳が揺らぐ
知ってるよ…あなたは誰よりも
ファンの一人一人を大切にしてる
だから,コンサートで
ファンサービスは細かくやるし
団扇をちゃんと読んで対応する
でも,そのコンサートは明日
売れてなかった頃の
“×”が書かれた団扇が脳裏に蘇る
和「俺にしたような弁解は,ファンにはできない…そうでしょ?」
智はゆっくり頷いた
覚悟を決めたみたいに目の奥が光る
智「ごめん…和也,教えて…他には?」
俺に向き直った智は
“嵐のリーダー,大野智”の顔をしていた
もう一度,アナグラムの事を話した
智はその場で
作品集の編集スタッフに電話して
名前の確認をする
いまいち話が通じなかったのか
電話を切った後
苛立ったようにベッドに座った
俺は何も言わずにその横に座る
コレはあなたが乗り越えること
だから優しい言葉なんてかけてあげない
でも,傍に居るから…
智「本人に…確認してもいい?」
智は俺を見る
連絡を…とるの?
嫌だとか,やめた方がいいとか…
言いたい言葉が出てこない
言葉の代わりに立ち上がって
距離をとるために窓際の椅子に座って外を見た