第19章 シーモスscene1
俺たちは新宿に居た。
伊勢丹の駐車場に車を停め、新宿御苑の方向にふらふらと歩く。
変装は、ばっちりすぎるくらいばっちりした。
なんと言っても、今日歩くのは。
新宿二丁目。
そう、特殊な性癖の男性が集まる街。
この前番組でいかされたところ。
でもこの話はそれよりももっと前になる。
去年の10月の話である。
ハワイが終わって、コンサートツアーのリハに、紅白に、生放送の準備に、選挙特番に、新アルバムのプロモに。
そんな時期だった。
俺の相棒は、来年の4月クールでのドラマ主演が決まっていた。
でも現段階ではさほど仕事は増えていない。
俺のスケジュールの都合で、この日はオフを合わせてもらっていた。
ちょっとくたびれているが、この日のミッションは絶対果たさねばならなかった。
「翔ちゃ…」
「しっ…回りをみろ…」
相棒は、気軽に俺の名前を呼ぶ。
「俺のことはそうちゃんと呼べ」
「わかった、翔ちゃん」
「全然いえてねーよっ!」
突っ込みどころ満載の相棒であるが、まあいい。
こいつとは長い間の戦友だから。
「ソウバくん」
「……?」
「お前の名前ソウバくんな」
「え!?嫌だよ…」
こだわりの箇所が謎な相葉雅紀。
これが俺の相棒。
「じゃあなんならいいんだよ」
「ばっくんで」