第1章 プロローグ
宇宙。
何処までも続くような深い漆黒の闇の中で、
様々な強さでまたたく星たちが点々と、
それぞれの自己主張を続けている。
そんな中、独特な輝きを放っているのが、我らが地球。
そしてその青木星を見守るかのように、
ゆったりと傍らに浮かぶものがある。
月――――大きさこそ地球に遠く及ばないものの、
その白く静かな佇まいは、
宇宙船体をコントロールしている様な荘厳さすらたたえていた。
実際のところは定かではないが、宇宙は悠久の間、
その平和的な構図を保ち続けていた……はずであった。
しかしながら、この日、
宇宙には些か異常な空気が漂っていた。
その主役はむろん、月。
しかもハッキリとした、三日月である。
我々にとって、三日月自体は何ら不思議なものではない。
月が“欠ける”などと言われる現象が、
その時太陽からの光が当たっていない部分が
地球からは黒く見えているというだけで、
諸神話に語られるように
実際に化け物の胃の中へと失われているわけではないのも
今では誰もが知っている。
しかし、今日からはそんな錯覚に頼らずとも、
月はそのフォルムを保つことができるだろう。
それは陰影などという以前の問題で、
実際に白い体の大部分がごっそりと、
えぐり取られて消えてしまっているからだ。
そう、月は、、、
破壊されていた。