【おそ松さん】マフィア松でスパダリ長兄松に溺愛されるだけ
第1章 お兄ちゃんから卒業
朝目が覚めたら、お兄ちゃんの匂いがした。
火薬とタバコとお兄ちゃんの汗が混ざった匂い。
いい目覚めだなぁ。
私は、ぎゅっとお兄ちゃんのいい匂いがするシャツを抱きしめた。
まるで、お兄ちゃんに抱きしめられてるみたい……。
落ち着くし、もう一眠り……。
☆ ☆ ☆
私は離れのソファーで寝ていたのに、起きれば母屋で寝ていた。
しかも、ほとんど入ったことのない、組のトップがよく集る部屋。
実の所、私天月 鈴の家系は白虎組というヤクザを営んでいる。
私は、女ということでほとんど関わった事はないから……、急にこの部屋へ連れてこられるなんて、嫌な予感しかいない。
少し前に、何をしていたけ? と寝ぼけた頭をフル回転させた。
――そういえば、離れに誰も居ないことを良い事に、お兄ちゃんのシャツの匂い嗅いで、なんか落ち着いちゃって……、そのまま寝たんだっけ?
私の頭の中から、さぁっと血の気が引いてく。
だって、お兄ちゃんや家族にバレたってことでしょ?
気持ち悪いって、罵られたらもうショックで生きていけない。
だから、お兄ちゃんが好きって気づいた幼稚園の頃からずっとずっと、気持ちは隠していたけど。
このまま、墓場まで持っていくつもりだった。
なのに、どうしてこんなミスしちゃったんだろう?
私、このまま逃げちゃおうか?
思い切り、扉を開ければ誰も居ない。
辺りを見渡して、誰にも見つからないように外へ向かって歩き出す。
でも、行く宛なんて見つからない。
ヤクザの娘である私に、友達なんてヤクザかマフィア関連のお嬢様ばかりだし。
そんな所へ行けば、速攻手土産にされること間違いなし。
――じゃあ、どうしよう?
私は、仕方なくお気に入りの場所へ行く事にした。
お爺ちゃんが大切にしてる庭園の中で、一番綺麗な池が見える場所。
何か問題があれば、私はここに来て一人で考える。
実のところ、こことさっきの幹部が集まる部屋は近いから、ここに近寄ろうとする人は少ない。
しかも、入り口から反対方向にある場所だから、自ら足を運ばなければ、ここには辿りつけない。
そう、ここは一人になるにはもってこいの場所。