第1章 女神、就職先を見つける
「えぇと……、はた坊さんから教えてもらった場所は、この変よね?」
時刻は、真夜中。
普通の人々は寝静まり、ネトゲ廃人がアップを始める時間帯。
そんな時間に、一人の女が浮いていた。
ふよふよと空中を飛びながら、移動していた。
その名は、勝利の女神ヴィクトワール。
ほんの昔は、人々に勝利を与える受験シーズンによく働いてた女神様。
しかし、現在は神なんかに頼らず、実力行使で挑むものや、仏様等の他の神に仕事を奪われ、食いっぱぐれた女神様である。
失敗を恐れ、挑戦を恐れた人生を送る現代社会のツケが回ってきたとも言える。
その為、彼女は守護先……、言わば神様の就職先を探しているところだった。
彼女ヴィクトワールは、弟である幸運の神シャンスの就職(守護)先、はた坊と言う少年から「ここに友達が居るんだじょー」と話を聞き、是非就職(守護)させてほしいと頼みに来たのだ。
「――あらあら?」
飛行中、彼女は一つの青いボロ布を見つけた。
――いや、それはボロ布ではない、人だ。
頭から血を流し、体中に打撲の後があり、虫の息だ。
生きているかどうかも怪しい。
「よかった、仕事が落ちてた」
そう、聖属性に所属する神は、傷を治せる特技を持つ。
ただし、折れたりちぎれたり、病気は治せないが。
その為、怪我してる人間を見つけたら、つい仕事にありつけたと喜んでしまうのだ。
少しでも人のために働けば、自動で給料は振り込まれる、神はそういう仕組みなのだ。
ヴィクトワールは、早速魔法を唱えた。
すると、怪我がみるみるうちに自然回復し、腕等が折れてるものの、傷は治ったし数週間もすれば、元気に走り回る姿が見れるだろう。
そして、ヴィクトワールは真っ白なひらひらとしたドレス型のローブのポケットから、可愛らしい猫の形をしたがま口財布を取り出した。
その中には、黄金のコインが何十枚か入ってる。
「いち、にい、さん、しい、ご……。これで、一週間は食いつなげるわね」
給料が振り込まれた事を喜ぶと、ヴィクトワールはまたふわりふわりと飛び始める。
その時、怪我した張本人が起き上がった。