第5章 失われた恋の行方@菅原孝支
「…今ね、」
「うん。…言ってみんべ」
目線だけを菅原に向け、美心は遠慮がちに話した。
「孝支が、私の知らない誰かと手を繋いでるのが頭に浮かんで……すっごく嫌だったの…」
「…え」
「それで、…羨ましかった。孝支と、小さい頃とはいえ、手を繋いだ子が他にいるって思うと、なんか…苦しくて…」
「美心…」
美心が菅原と目を合わせる。
「孝支…私、おかしくなっちゃった」
そう言った途端、美心は目の前の菅原に抱きついた。
菅原は、よろめきながらも正面で受け止めた。心臓が一層高鳴り出したのに気付き、やっぱり言わないとな、と思い、美心の頭をポンポンと撫でた。
美心は気持ちよさそうに「孝支…」と呟く。菅原は、欲を自制するのに精一杯だった。
「…孝支、私気づいちゃった」
「何に?」
美心は、ポツリポツリと話し始めた。
「孝支といると、素直になれるの。楽しくて、ドキドキして…どんな男子とよりも、孝支と一緒にいる時が幸せなの」
「…俺もだよ」
菅原は美心の顔を上げさせ、きちんと目を合わせた。
美心は優しく微笑み、想いを伝えた。
「…私、孝支が好きみたい」
「…俺、美心の事ずっと好きだったよ。もちろん、今も」
存在は知っていたのに、無視され続けたその恋。
「…ありがとう。なんか……嬉しいや」
「俺も!超嬉しい」
2人は微笑み、再び手を繋いだ。
さぁ、もうグスグス泣くことはない。
失恋、失恋、失恋。
失われた恋の行方は………
…君のもとへ。
fin