第19章 月頼み@岩泉一
今日は祭り。神輿も出るという割と大きなもので、屋台もたくさん出ている。近所の小・中学生からビール片手に騒ぐ大人まで、沢山の人がいる。
…とにかく人が多いのだ。岩泉は美心とはぐれない様、ずっと手を繋いでいた。
そのさりげない気遣いに、また美心はときめくのであった。
「——はじめちゃん、今何時?」
「今は…8時前だな」
金魚すくい、射的、ダーツ……と、遊びを楽しんだ2人。美心の片手には、岩泉に貰った射的の景品などが握られている。
しかし、慣れない下駄は歩きづらい。足が疲れたので屋台の間に立ち止まっていると、すぐ近くから若い声がした。
「お?リア充発見!恋人繋ぎをしておりますオーバー?」
「爆ぜろ」
「チッ」
「コラうるさい!眺めるだけにしなさいバカ!」
見ると、小学生か中学生位の男女グループが何か言いながら、屋台の陰から団子の様に連なって2人を覗いていた。
岩泉もそれに気付いたのか、焼き鳥を食べる手を止め、4人の少年少女の前に歩いて行った。美心は照れながらも苦笑いし、彼の後に着いて行く。
「あああ、すみません!お邪魔しました!!」
ツッコミ役かまとめ役かの女の子が律儀に頭を下げ、3人は彼女に連れられて共に人混みへと紛れて行った。
「ふふ…なんか、最近の子はませてるね〜」
美心は岩泉の口許に付着した焼き鳥のタレを指で拭い、自分で舐めた。美味しいね、と感想を述べると、額に優しい感触が降る。