第8章 日常③。
~烏野チャットのその後~
『あ』
「あ…」
しまった、校門前でばったり翔ちゃんと会ってしまった。昨日のことがあるから気まずすぎる…
『おはよう、翔ちゃん』
「おっ、おっおは、おはよっ///」
うわぁ、すごい動揺してるよ…
顔も見ずに言い捨てると、翔ちゃんはわたわたしながら走っていった。今日一日こんなか…
『おっはよーユキちゃん』
「おはよ~」
『何、寝不足?』
欠伸をしながら挨拶を交わしたユキちゃんをえいっ、と小突く。笑いながら席に座ると、一番顔を見たくない人が隣にいた。
「…オハヨ」
『おはよ…』
しまったあぁぁぁ!
席、隣なんだったあぁぁぁ!
内心悶絶しながら、表面では精いっぱい笑顔を取り繕う。笑え、笑え私。
こっちの努力を知ってか知らずか、蛍くんはいつもに増してニヤニヤしてる。
「え、何、なんかあった?」
「ああ、昨日チャットで…」
『ゆゆゆユキちゃんっ、トイレ行こー!』
「え、月島くんと話して…ちょおい!」
ユキちゃんの腕をむんずと着かんで、一目散にトイレに走る。振り向けば蛍くんが意地の悪い笑みを浮かべているので、絶対に後ろは見ない。
かくかくしかじか説明すると、ユキちゃんは爆笑していた。
「あっは、はははは、おかし、あはっ」
『笑い事じゃないからっ!』
「いやぁ、だって、あははは…」
一頻り笑うと、ユキちゃんは愛されてるねぇ、とにっこり笑った。
そしてその日の部活。
「月島、ボールとってくれー」
「…どーぞ菅原さん」
「おい、月島ァ!」
「田中さん、うるさいですよ」
「月島ー」
「はぁ…大地さんなんですか」
蛍くんがみんなからこき使われてる気がするのは気のせいだろうか?
試しに飛雄くんに訊くと…
『飛雄くんー』
「ん?ああ、俺か」
『名前で呼べって言ったのそっちでしょー』
「悪い、でなんだ?」
『昨日あの後なんかあったの?』
そう訊くと、グーサインを出して、黒い笑顔でこう言った。
「打倒月島同盟だッ!」
はぁ?
そのまま練習に戻っていってしまったので、それ以上深く追求できなかった。それから一週間、蛍くんへのみんなの当たりが強かったとか…