第1章 月曜日
立ち読みお断り。
「・・・・・・・・・」
墨痕鮮やかな貼り紙に、服部全蔵はしばし足を止めて見入った。
「・・・上手いな。初段くらいか?」
顎に手を当てて最もらしく呟くと、背後から怠げな声がした。聞き覚えのあるイラッと来る声だ。
「いやいやいや、習字甘く見んな。年も性別もわかんなくなっちゃった妖怪もビックリの年寄りが山盛り幅きかせてんのが書道だぞ。こらせいぜい三級ってとこだろ」
「三級はシブいな。せめて初級だ」
「いやいやいやいや、なあんもわかってないね、お前は。年寄りにこんな勢いのある字は書けねえって。年取ってねえのに上手いわけねえじゃん」
「年功序列だったか?習字って」
「あーあー、やっぱな。やっぱ何もわかってないよ、この人は。年取って何ぼですよ、書道は。上下関係は脳ミソから胃袋まで筋肉にやられちゃった体育会系並みに厳しいからね。上手いとか下手とかお父さんのパンツよりどうでもいいから。知恵袋と体の震えのでかさがステータスだからね、あの世界は。何なら皺の数とか深さで計ってもいい。弾ける若さなんかもう全然いらないから」
「・・・・・ゲロくせーぞ、ジャンプ侍」
「あ?何だよ、イチゴ牛乳呑んだのにわかっちゃった?忍者は鼻ァいいねえ。あァ、すごいすごい」
通勤ラッシュの朝の喧騒の中、誰憚らずアルコール臭い欠伸をかました坂田・モジャモジャ・銀時が、全蔵の肩に肘をかけて目尻を拭った。
「臭い消しは牛乳だろ?くせーんだよコラ」
「あ"?何だテメェ、イチゴ牛乳に物申すってか?イチゴ牛乳敵に回すって事は銀さんを敵に回すって事だよ?いいの?いい訳?今なら銀さん速攻必殺マーライオン繰り出せちゃうよ?止まらないシンガポール食らっちゃいますか?ライオンの町からこんにちはしちゃいますかあァァ!?ぅ"おえ・・・」
「・・・・おい。かかったぞ。てか被ったぞコノヤロウ・・・このジャンプ発売日に何て事しやがる。テメーもうジャンプ侍返上しろ。一週間七日中一番大事な月曜日に二日酔いなんかしやがって、ジャンプファンの風上にもおけねえんだよ。お前はもうマガジン侍になれ?何ならサンデー侍だ。水曜日に出直してこいや」
「違うんだよ、これは!何つうの、いわゆるジャンプ発売の前祝い的な?ジャンプを愛するあまりのヤンチャの結果なんだっつの!おえ・・・」